県連登攀教育部剣合宿報告

有元眞理子

日程:200888日(金)夜発〜12(火)

山域:剣岳 

目的:クライミング合宿

参加者:玉井、有元(L岩佐、SL門脇・渕上、吉谷、松本、小塩、森濱、大石、小倉、瀧、野本、河尻)

 

県連登攀教育部主催の岩登り合宿が行われた。メラからは玉井と有元が参加した。三ノ窓合宿といきたいところだが、熊の岩BCだ。それでもアプローチはかなりきつそう。合宿に備えて、ランニングトレ&ストレッチ、ボッカ、そして岩登りのトレーニングが組まれた。前半は雨でなかなかトレーニングが出来なかったが後半は順調だった。

 

8/9夜行バスで室堂まで直行だ。便利。お天気は晴れ。室堂ターミナルに到着し、共同装備・食糧などを分けて、パッキングし直す。記念撮影を済ませて出発だ。雷鳥のテント場で休憩。山歩渓のメンバーがテントを張っている。雷鳥坂を2ピッチで登る。有元は2ピッチ目の出発時に動悸がして、しばらく休んでゆっくり登る。なかなか治らないので剣御前で共同装備を渡したら帰ろうと思いながら、やっと御前に到着。休んでも脈が落ちない。共同装備を全部メンバーに持ってもらう。ここからは下りだから、

最悪剣沢で小屋泊というつもりで出発する。診療所に寄って相談する。無理しなければ大丈夫だろうということで、熊の岩へ向う。剣沢の雪渓からアイゼンを付ける。テント場確保のために早く歩ける人は先に行くことにする。

長次郎の出合いで休憩。河尻さんも体調が悪い。高山病なのか吐き気がするそうだ。おまけに登山靴のソールが剥がれかけている。二人でゆっくり登る。少し登ると熊の岩が見える。近そうで遠い。トップは1430に着いたとか。瀧、野本の若手2人が迎えに来てくれた。有元、河尻は1600前に到着。熊の岩は大きいけどテント場は余りない。女性4名のテント場は水場が近く乾いていて、いいところだ。宴会の準備もほぼ終わっている。天気図は森濱さんが書いてくれている。お天気の心配はない。早速宴会だ。各種前菜の後、味噌仕立ての鍋。ご飯も五目御飯と白ご飯。デザートのプリンは失敗したが、豪華な食事だ。翌朝が早いので、早々にそれぞれのテントに戻る。

 

8/10230起床。チンネ左稜線を登る森濱―大石は330に出発する。まだ暗い。雪渓の状態が心配だ。有元は源次郎尾根、玉井は源次郎の平蔵谷側壁の中谷ルートを野本君と登る。有元は起きてみて体調を見て、行くかどうかを決めることになっている。全く普通と言うわけでもないけど、何とか行けそうということで、門脇、瀧、松本の4名で出発する。

尾根の取り付きで、ハーネス、ギヤーを付けて行くという指示だ。ええーー、懸垂だけじゃないの?樹林の中の道は浮石だらけで気を使う。直ぐにちょっと登りにくい岩が出てくる。トップで歩いている瀧がザイルを出すという。そうなんだ。確かに登りにくいところだ。樹林の中の道が続き、ザックのピッケルが邪魔だ。3級程度の岩登りが出てきて、そこでもザイルを出す。途中でルンゼの方へ入りかけて、尾根に戻る。相変わらず樹林の木登りが続く。右のルンゼが合流する辺りは浮石が多く気を使う。その少し上に私達を追い抜いて言った3人パーティーが休憩している。そして1峰が高く頭上に見える。彼らはここから側壁を登るそうだ。コルへは冬道通しに登る。コルで休憩だ。940、門脇さんが川崎のメンバーと無線交信する。1峰へは左のルンゼから登る。一旦下り2峰の登りとなる。遠そうだが30分だと門脇さんが言う。そんなもんかな。懸垂下降地点には先行者がいるので、ピーク付近で休憩する。左俣がよく見える。どうも雪渓の状況が悪いようで、登りのパーティーも遅遅として進まない。下山する人もいたが、そのうち姿が消えた。諦めて引き返したんだろう。

懸垂下降支点は太い杭が打ってあって大きな鎖といろんなスリングが掛かっている。バックアップを取って下降する。降り口は被っているが下は壁が寝ていて降りやすい。途中にボロの支点がある。下降を終えて、ピークに行くかどうか、エスケープが使えるかどうかを検討する。無線でBCと交信。下部の雪渓の具合を聞く。左俣の下りは諦める。あとはピークを越えて別山尾根経由でテン場までだが、時間がかかりそうだ。エスケープを偵察する。なんとか下れそうだ。踏み跡もある。が、雪渓が切れるとガラガラの急な下りだ。

渕上さんが上がってきてくれて、下降路を指示してくれる。岩場を下り雪渓を横切り、ガレ場をトラバースし、又雪渓をトラバースして、無事テント場にたどり着く。と書けば簡単だが、大変だった。とにかく落石がすごくて、それがシュルントに落ちて、すごい音がする。その音だけで怖い。バリエーションの下降路はこんなもんだ、まだましだ、と渕上、門脇両人はおっしゃるが、、、。

玉井パーティーは1100には登り終え、源次郎を下り、長次郎を登り返すそうだ。

三の窓のメンバーも予定通りだ。夕食までにはみんな揃った。日がかげると寒くなるので、早々にテントに戻って明日に備える。

 

8/10 今日はDフェース。それでも500出発だ。メンバーは玉井、小塩、有元の3名。テント場から20分で取り付きだ。登るルートは久留米大ルート。3ピッチ目にA1がある。当初、富山大ルートだと思っていたがアブミを持って来て良かった。まあ、玉井や小塩はどちらでもいいんだろう。打合せもしていない。久留米大の取り付きはシュルントに降りて、細い雪渓に立って、さらに、奥の雪渓に移らないといけない。剣の岩登りはこれがあるからなあ。奥の雪渓に移るのが怖くて出来ない。足がギリギリで届いているんだから。玉井にピッケルを借りてダブルアックスでやっとこさ乗り移る。

狭い棚で装備をつけるので時間がかかる。小塩リード、ビレーは交替で行う。1ピッチ目、わりと立った壁だ。直ぐに姿が見えなくなる。が、浮石が多くパラパラと石が落ちてくる。30mということで、そろそろ終了点を探すようにコールする。有元が登り始めるが最初の数歩で右往左往。ホールドがみんなまん丸で摑めない。易しい右から回り込んでA0だ。4級でこれか?後は4級+、A1だぞ。帰った方がええかな?と思いつつ登ると傾斜が緩み一安心。あの一手だけだった。しかしホントに岩が安定していない。あんまり登られていないのかなあ、、、。ピンも古いし。小塩はセルフビレーを取れるだけ取っている。それで少し時間がかかるんだ。フォローのセルフは吉谷に習った確保器を使って行う。少し時間短縮だ。2ピッチ目一旦右へ回り込む。スリングが短いので長くした方がいいと言うと、少しクライムダウンしてやり直す。このピッチは快適。3ピッチ目、ハングが見えているが、小さなハングで助かった。40年振りという玉井、ルートをきっちり覚えていて、リードする小塩にアドヴィスする。すごい、といつも思う。どうして覚えているんだろう?左上しハングに達したら右上、ここでハングを越えてスラブを登って右へ移ってビレー。

このピッチには大きな浮石があると小塩。ヌンチャクの下だから注意するようにと言う。今まで順調に登っていた小塩が止まってしまう。まだ、ハングには来ていない。ハングへ右上するところだ。ええー、小塩さんがあんなに苦労しているなんて。どんなとこ?私はどうなるの?どうにか登って問題のハングはフリーで越えた。そしてその上のスラブで又時間がかかっている。ナッツをきめるのに時間がかかったようだ。セカンドは有元。浮石がどれだったか?これか?これか?そればかりが気になる。もっと上や、と玉井。これか。足を置きたい石だが、、。

それをよけると、ざらざらの足場でこれもいやだ。でも他にない。そっと足を置く。そして右上するスラブだ。なーるほど。これは難しい。ツルツルじゃん。悩んでいると玉井も到着。A0か?うーん、ピンが遠い。ここがA1か?きっとそうだ。アブミで右上する。ハングは足場があってフリーで越えるが、次の一歩もA1だ。左の壁からビレー点の右に移るのが微妙。日が照って暖かい。後は易しい3級のスラブが2ピッチ。Dフェースの頭では、レーションを摂り、写真を撮り、景色を眺め、ゆっくり休憩する。

昼にはテントに着くだろう。ゆっくりしよう。と思いつつ縦走路を下る。あまりいい道とはいえないが、ましな方だ。途中で右へも左へも行けそうなところがあったが、左の方が良く踏まれているいようなので左へ下る。すると懸垂支点が出て来る。渕上さん達は懸垂せずにクライムダウンしたというが、よくこんなとこクライムダウンしたなあ、無謀やで。コルへは大分右だからその辺りにトラバースの道があるんだろうと、50m1本でセットする。が、上からトラバースに見えたところは実は何でもなかった。

仕方ないので、玉井は木でセルフを取って、上でザイルをつなぐ。最初からそうすればよかったな。時間ロスだし危ない。有元ザイルいっぱい降りるが、トラバース出来そうなところがない。おかしいなあ、、、。と思っていると、木にスリングが巻いてある。まだ新しいスリングだ。何ピッチも懸垂するんだったか???次のピッチは玉井が降りる。ここで道を間違ったかも、と気付く。このまま降りるとコルまで登り返しが結構大変そうだ。問題は雪渓だ。つながっているのか?玉井が偵察する。なんとか行けそうと言うことで、もう1ピッチ懸垂する。ちょっと広めの棚に着く。コルが右上に見える。上からここ懸垂するんですよねえ、、と2パーティーが声をかけてきたので、登り返すように言う。さらにもう1ピッチ懸垂だが支点は不安なので、ハーケン2本を打ち足し、新しいスリング3本で造り直す。二人でチェックして下降。この間に、雪渓の状況が分らないので、上からザイルを下ろしてもらおうとBCに無線を入れるが入らない。仕方ないなあ、自力で登らんと、、。

 

やっと懸垂が終わる。長かった。コルまで登り返しだ。一応ビレーして階段状の岩を登り、アイゼンをつけて雪渓をダブルアックスで登る。小塩がアイス用のバイルを持って来ていて助かる。というか、小塩はここでアイスクライミングが出来るとニコニコしている。緩い雪渓を登って、クライムダウン。左の岩を登ってやっとコルに到着。玉井の無線交信で事故があったことを聞く。

雪渓が嫌でチンネや八峰は避けたのに、こんなところで雪渓登りをするなんて。まあ、無事に帰ってこれて良かった。たとえ取り付きまで20分の岩場でも非常用装備は必要と改めて認識した。テントに戻ると、冷やしたビールをとりあえず一口戴く。この一杯がおいしい。アイゼンをはずしている時に登山靴の底が剥がれているのを発見!テーピングテープでとめる。宴会が始まっているが、なんか疲れたなあ。装備をトロトロ片付ける。今晩の夕食はカレーライスだ。一式を持って宴会場へ行く。野本君がいないと思ったら天気図を書いてくれている。もうとっくに4時は過ぎていると思っていた。

今日もいろいろ前菜があって、ビールがおいしい。大峰の事故の時お世話になった青木さんが隣にテントを張っている。骨折は入院した方が早く治ると言う。明日は600出発だ。男性パーティーはこれから食事だそうだ。私達はテントに戻ってお茶をして就寝。

 

8/12 400起床。明け方寒かった。お茶漬けとスパゲティの朝食をお腹いっぱい食べて、パッキング&テント撤収。雪渓の具合は丁度いい。良かった。1ピッチで下る。疲れた。今日もお天気は最高だ。剣沢を上り登山道に入る。剣沢の診療所に寄るが先生は剣山荘に出張だって。剣御前を目指して出発。ハクサンイチゲの群生が本当にきれい。御前には子供達がいっぱい。剣をバックに記念撮影後下山する。河原まで1ピッチはしんどかった。地獄谷経由で室堂へ向う。最後の階段の連続で心臓が持たなくなった。少し休憩して息を整え、ゆっくり登る。室堂はお盆前だが大勢の人でいっぱい。幸いバスの時間待ちも余りなく乗車出来た。山にはガスがかかり始めている。お天気が悪くなるのかなあ。ケーブルは超満員。まあ7分だからいいけど。お風呂に入って、やっと昼食だ。テレビではオリンピックの柔道をやってる。ゆっくり食事をして(ゆっくりすぎて急かされたけど)その後、簡単にミーティングを行う。富山に着くとなんと最終のサンダーバードしかない。ちょっとでも早く帰られるように、金沢まで各駅停車に乗る。30分ほど早いか?ところがこの各停が冷房が効いていないのか暑くて暑くて疲れてしまった。乗り換えた雷鳥。座席を取るのに行き来したが、慌てることはなかった。止まる度にお客さんが減って、みんなでお喋り出来る様に座れた。2230大阪着。お疲れ様でした。

 

「源次郎尾根T峰下部平蔵谷側壁『中谷ルート』の登攀報告」

玉井進吾郎

メンバー:L.玉井進吾郎、野本雅史

 

8月10日 4時に熊の岩BCを出発する。昨日久し振りに担いだザックの重さで2時間半ほどかかった長次郎雪渓も40分で下れた。出合の手前で明るくなり、平蔵谷を少し登って中谷ルートの取り付きに5時20分に着いた。すでに2パーティーが来ていた。先頭は京都のプロガイドで2番手は京都の市役所山岳会である。雪渓から岩場へ容易に移れ、1ピッチ目は易しく短い凹角だったのでロープ無しで登り、草付きバンドを右にトラバースして登攀準備をする。先行者がいるので待ちながら登ることになるのは煩わしいがルートファインディングの心配は要らない。

2ピッチ目(5.8 20m)野本リードで6時に登攀を始める。右手に人工ラインがあるが、ルートは浅い凹角に取った。先行者が割りと簡単に登っていたが、結構難しかった。野本は重いザックで上手く登って行った。

 3ピッチ目(W+ 20m)玉井リード。左へトラバースするのだが、上の方にピンが見えるのでよく間違うようだ。易しい草付きを登ってハングを回り込む。なお、2〜3ピッチ目は続けて登ることが出来る。ここまで1時間。

4ピッチ目(5.5 20m)野本リード。右が垂壁、左は草付きのないスラブのジェードルでコーナー沿いに登る。ガバホールドで快適なレイバックで登る。

5ピッチ目(5.6 40m)玉井リード。きれいなスラブのトラバース、ピンは適当にあるのでロープ交差に注意して登る。トラバースした後に幅広いクラック沿いに10m登ってビレー。このビレー点は頼りないハーケン2枚なので1本打ち足して補強した。右上部5mにはしっかりしたボルト数本の人工テラスがあった。

 6ピッチ目(W 30m)野本リード。ビレー点の上からスラブに出る。スラブは逆層だが、左壁との間のクラックをレイバックで登る。このピッチは右手の凹状(ルンゼ状)からも登れるが脆そうに見えた。ビレー点は洞穴状となっている。0845着。

 

7ピッチ目(5.7 40m)玉井リード。傾斜がある左の凹角から登る。このピッチは大岩溝として遠くからでも分かるところだ。ガレが堆積していたが、数年前に大崩壊してガレの多くは落ちたそうだ。それでも動く石が乗っているので触るのに気を使う。ヌンチャクも使い切ってビレー点へ。ビレー点からは大岩溝の底から剣沢のキャンプ場方面も見える。このピッチでかなり疲れた。

 8ピッチ目(V 30m)野本リード。暗いトンネルを左上に抜けてリッジに出る。地底のような暗さから明るいリッジに換わって気分が一新される。

 9ピッチ目(W 40m)玉井リード。最後のフェースが結構悪い。スラブ状フェースを右上し、ブッシュ帯を登って岳樺でビレーする。11時に登攀を終了した。

 

 

 

終了点からロープを引いて登るが、這松の脂がひどいのでロープを仕舞い、ギアを整理する。下山は当初、源次郎尾根をU峰まで登って雪渓伝いにBCまで帰る予定であったが、登るのも嫌気がさして尾根を下ることにした。ところが、源次郎尾根の下りも這松を掴んで木下りである。露岩帯2箇所でロープを出して懸垂をした。尾根末端に出た時は14時少し前だった。休憩後、1430出発したが、長次郎雪渓の長いしんどい登りが待っていた。BCに帰り着いたのは16時を過ぎていた。